優しい爪先立ちのしかた
私の心臓
駐車場に戻ると、車の外に出て待っている梢の姿が見えた。
「暑いんだから、中で待っててよ」
「座っていられる心境じゃありませんでした。すみません、本当に」
「私が勝手に置いて行っただけ」
助手席を開けた梢。栄生は大人しく車に入って、パタパタと手で自分を仰いだ。
梢は袖を捲ってはいるけれど、長袖を着ている。いつもいつも、暑くはないのだろうか。
「お兄さんと会った。だから少し遅くなっちゃった、ごめん」
思うよりすんなりと、ごめんと口に出来た自分に驚く。
あんなにカナンとケンカした時、自分から謝るのもその言葉を口にするのも躊躇っていたのに。
人は変わるものらしい。
「梢は知ってるかもしれないけど、」