優しい爪先立ちのしかた

暗めな話は笑ってするものだと、栄生は決めていた。

「梢は氷室のそーゆードロドロした話知らないみたいだから、まあ序章として」

「序章って…」

「さてさて、今日の夕飯はなんだろなー」

お腹の空いた栄生は人の話を聞かない。

溜め息を吐きながら、車を発車させる梢。

夕日が赤い。

それに目を細めた栄生はどこか眠たそうにも見える。

明日には本家に向かわないといけない。

それは、栄生にとって、大変なことだと理解はしているが。

変わることは、出来ない。

「夕飯、魚だと良いですね」

「あ…! 魚って言うの忘れてた!」

本日の夕飯は、すき焼き。



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