優しい爪先立ちのしかた
しかし栄生は冗談を言ったつもりはない。
「僕はごめんだな、お前みたいな我儘女なんて」
「聖には言われたくなーい」
黒に返された駒を白に返す。聖はそれを見て、目を細めた。
ほら、自分の思い通りにならないとすぐに不機嫌になる。
「だから言っただろ、お前は僕に似すぎてる」
とか思っていたら、聖に角をまんまと取られた栄生。
長い爪が栄生の方へ向く。
「お前には梢みたいな後ろをついて回るような奴が良いよ」
眉を顰めた栄生の顔を見て、聖が不敵に笑う。
我儘が我儘に勧めているのだ。間違いはない。
「…梢は私の世話係だから後ろをついて回ってるだけだもの」
「欲求不満ならつべこべ言わず押し倒せよ」
「私阿婆擦れじゃないし!」