優しい爪先立ちのしかた
オセロの勝負がついたころ、とんとん、と襖が叩かれた。
「はーい」
「なんでお前が返事するんだよ」
「栄生さん、夜更かしすると明日に響きますよ」
梢の声。ふと栄生は時計を見上げる。
日付が変わる少し前。
おやすみ、と言って、立ち上がる。
「勝ち逃げかよ」
「また今度来るよ」
「来年な」
おやすみ、と聖が返す。
襖を開けると、梢が立っていた。
栄生の姿を見て、その後をついていく。
「仲良いんですね、聖さんと」
「そうなの、我儘同士」
「同年代ではないですよね」
「多分梢と同じくらいじゃないかなあ」
突き当りを曲がる。ぎしりと床が鳴ったのに驚いて栄生が足を止めた。