優しい爪先立ちのしかた
翌朝、梢は既に着替え終わっていて、栄生を外で待っていた。
「聖、ばいばい」
「ああ、じゃあな」
「結婚式には呼んでね」
「お前、まだそれを引き摺るか」
べしっと強い力で頭を叩かれる。それも愛情表現のひとつだと思うのは、栄生もそうだからだろう。
「今度の世話係は長く続くと良いな」
他人事のように笑う聖は、決して部屋から出て見送るということはしなかった。
一人で出てきた栄生を見て、助手席の扉を開ける梢。
「あーあ、家に帰りますか」
「了解しました」
「突っ込んでよ。一人ボケしてるみたいじゃない」
続いて運転席に乗り込む梢に向かって言う。ははっと軽く笑った梢はシートベルトをして、ハンドルを握った。