優しい爪先立ちのしかた
肉じゃがは絶品だった。
パクパクと口に運ぶ梢を見る。栄生の中では、髪の色もあるからか本当に犬に見えてきた。
「本当は、初めて来たときに話し合わないといけなかったんだけど」
きょとんとした顔を栄生に向けた梢は、その空気を読み取ってか、箸を置いた。
「はい」
「私は氷室の家の中では底辺。こんな田舎の屋敷で放されていて、そんなところに梢は送られてきた」
送られてきた、なんて。
まるで本家からの監視役のようだ。
じゃあ、これまで彼女は梢を敵としてみなしてきたのだろうか。
続けられるであろう言葉を、きちんと待った。
「これから、どうするの?」
笑った顔が寂しい。
『今までもあいつに仕えた奴等は一ヶ月以内に屋敷から追い出される。意地になって動かない奴も居たけど、金を積まれれば心も揺れ動くもんだろ』