優しい爪先立ちのしかた
彼女の肩胛骨
猫のように伸びをしたカナンを呆れた顔で見る式鯉。
「練習後で悪いけど」
「あー…すみません、疲れてるのは先生も一緒ですよね」
ラクロスの練習後。日差しと人目を避けるようにカーテンをしめた教室に、二人は居た。
「まあ、大体比須賀くんから概要は聞いた」
「あたしは何を話せば良いんですか?」
「街を出ようってなったとき、御両親とか、氷室さんの顔、浮かばなかった?」
何かを見透かされた気分。
式鯉は何の資料も筆記用具すら持っていない。本当に話をするだけ、らしい。
カナンはカーテンの隙間から見える空の色を窺う。
「深山さん、そういうの、一番に気にしそうなのに」
「…そんなこと、ないですよ」