優しい爪先立ちのしかた
同じように式鯉も隙間を見ていた。
しかし、視線の先は空ではなく、グラウンド。
昨日は夕立が降った。今日も降るかもしれない。
「比須賀はこの街の人の同情の目から逃げたかった。あたしも、同じようなもので」
「逃げたかったの?」
「はい、きっとこういう境遇みたいな。絶対もう逃れられないようなものから」
カナンの視線は式鯉の目に向いた。
それは、本心。そして、本音。
最近の女子高生は、主張をきちんとする。
もう受験の年だ。それに夏は勝負なのに。
「…そう、それで。氷室さんの平手打ちは効いた?」
「はい、めちゃくちゃ染み渡りました」
あははっと笑いながらカナンが答える。未だ頬は赤い。薄らだが、目の下に栄生の指の痕が残っている。