優しい爪先立ちのしかた

自己評価が低い。

誰にも言われたことはない。違う、誰にもそんなこと思わせたりしなかった。

「私の話は今いいの。星屋のこと」

「だからあれは男です」

「そんなわけないでしょう? てゆーか、根拠は?」

「匂いで分かります、栄生さんこそ女だっていう証拠はあるんですか?」

詰まる議論。いや、しかし五分五分だ。

栄生は唇に指を当てながら考える。

思えば、そういうものはない。

一緒にお風呂に入った覚えも無ければ、星屋のパンツスーツ以外に見たことがない。

「…匂いって、犬みたい…」

小さく呟きながら、栄生は負けを認める方向へ決められていった。



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