優しい爪先立ちのしかた
その日、栄生は星屋に釘付けだった。
そのことにすぐに気付いた梢は、少し困ったように笑う。
「でも、もし星屋が男だったとして。滝埜はそれを知ってるとは限らないんじゃない?」
「流石にそれはないと思いますけど」
日本庭園を散歩しながら考える。後ろを歩く梢は池に何の生物がいないのを見て、目を逸らした。
前を歩く栄生の髪の毛が揺れる。
その風で帽子も飛びそうになったのを押さえた。
「…あら、居らしたの? 栄生さん」
声が聞こえた方に二人の視線が向く。
会ったことがなくとも梢には、分かった。
栄生とどことなく雰囲気が似ていて、それでもどこか狂気を含む。
「お邪魔してます、呉葉さん」