優しい爪先立ちのしかた
梢の運転よりも命の危険を感じた栄生は、駆け寄ってきた梢を見上げる。
「すみません、ありがとうございます」
星屋から半ば無理やり栄生を取り返す。
「いいえ、お怪我はありませんか?」
優しげな笑顔で栄生に聞いた。「うん、大丈夫」と少し頭を下げて、梢の首に腕をまわした。
「良かったです、では失礼します」
頭をきちんと下げた星屋は滝埜に目を向ける。
「ばいばい」
と、そちらへ目を向けない栄生の姿を心配そうに見つめた滝埜。
梢も頭を下げて、少し口元に笑みを作る。
二人の行ってしまう背中を見届けて、鎖骨に額を当てたままの栄生を見た。