優しい爪先立ちのしかた
彼の右手






二日目の朝、栄生が縁側で歯を磨いていると滝埜が眠そうな顔をしながら挨拶をしてきた。

「おはよう、どうしたの?」

もしや昨日星屋と、などと考えるところ、栄生の頭はそこらの盛り時期の狼と同じかもしれない。

いやしかし、年に何回も会わない星屋が男だと昨日判明するとは。

犬の嗅覚は侮れない。

「昨日ねー、従姉妹の子達とトランプやってて。眠るの遅くなって、星屋さんに怒られた」

「から、朝から避難ね」

「そうなの。梢さんは?」

後ろ、と指差す先にきちんとスーツを着た梢の姿。

おはようございます、と金茶の髪が朝から威圧的で、滝埜は「おはようございます」と頭を下げる。



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