優しい爪先立ちのしかた
彼女の掌
うわ、と声をあげた栄生の方を見る。
持っていた封筒は薄く、裏からでも手書きの文字が透けていた。嶺からだろうか、と考えられる範囲で答えを出した梢。
「…週末、誕生日会開くって。お父さんから直筆の手紙が」
「誕生日会って」
「この遠回しな書き方は多分、お母さんの」
多分、という言葉に引っ掛かったが、突っ込まない。栄生が話すまで待っていようと思っている。
誕生日会というくらいなので、本家で開かれる。氷室グループの持っている庭園は、二人の住む屋敷とは比にならない程の大きさ。
あー…と躊躇いがちに口を開ける栄生は気分が乗らない。
「俺が断っておきましょうか」
「いやでも、折角だし。うん、行こっかな…」