優しい爪先立ちのしかた
静かに栄生と梢は立ち上がった。
「お兄さん、いつ頃着いたんですか?」
スルーされた…と感じながらも嶺は答える。
「一時間くらい前。今日も夜中には帰る」
この男が飲まずに帰れるとは思わない。
梢は遠い目。
「勿論運転代行連れてきた」
「その用意周到さは血ですかね?」
「梢、前より増して生意気になってないか?」
栄生に視線を向けるが、微笑むだけ。
トントン、と今度こそノックの音が聞こえる。
「栄生さん、夕食会の準備が整いましたので」
その声に返事をする。まさかここに二人の男い居るとは思わないだろう。
少し時間を空けて、三人は部屋を出た。
幸い廊下にも縁側にも人はいなくて、そのまま会場へ向かう。