優しい爪先立ちのしかた

四分の三ほどの席が埋まったところで、会は始まる。

現当主である、栄生の父親の言葉があってから、各々の料理に手をつけはじめる。

滝埜から回ってきたオレンジジュースの瓶を隣の杏奈に渡す。春に会った時に比べて少し背が高くなっているのに、成長を感じる。

「では、みなさん、」

父親の声に、振り返る栄生。
先程、小さな声で異端者の話をしていた者と目があった。


「御当主、私からひとつ、良いですか」


その場にいた殆どの視線が向く。

勿論、梢も嶺も。
父親の隣の呉葉も。

父親の娘であることは誰にも否定出来ない。

周りの者からの反論はなかった。


「ああ。なんだ?」



< 162 / 326 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop