優しい爪先立ちのしかた


飲め飲め、と酒を勧められる。

本当に、栄生は魔法を使えるのだろうか。

あの博打のようなタイミングでの発言が、梢の周りの空気をどれだけ和らげてくれたことか。

「本当、お前も出世したよなあ」

隣の同期がバシバシと肩を叩いてくる。
…酔ってるし。

梢は少しずつ日本酒を口に含みながら、栄生の父親を窺う。正確には、その隣の母親の方が気になっていた。

「梢、漬け物欲しい」

後ろから来た栄生の声に少し驚きながら振り返る。

「あ、はい」

「今、呉葉さんに見惚れてた?」

「いいえ」

「本当?」

「はい」

イエスノー問題のように続く会話。
周りが物珍しそうに栄生の声を聞く。



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