優しい爪先立ちのしかた
目を細める栄生に、梢は漬け物の隣に出汁巻き玉子をつけた。
「…なんか生意気」
そう言いながらも許す。
満足したらしい栄生の後ろ姿を見て、梢は息を吐く。
「あの歳で一人暮らしだもんな。しかも本家じゃイレギュラー扱い」
同僚がテーブルに肘をつきながら日本酒の入ったコップを持て余す。梢の頭の中で、イレギュラー、と反芻した。
「内の人間からは憐れまれて、外の人間からは見下されて。どっかで潰れないと良い…つか、お前が命張って守れよ!」
「…ああ」
酔っ払いの戯れ言ととるべきか。
忠告ととるべきか。
しかし、何があろうと守ることは、栄生の家に来たときから決まっていた。