優しい爪先立ちのしかた






宴会が終わったのは日付の変わる直前だった。

裏方とボランティア精神旺盛な人間が片付けは始めて、栄生もその中に居た。

「栄生さんは部屋に戻ってください」

皿を重ねる梢に言われたが、栄生が戻るはずもなく。

栄生の存在を知っている裏方に気を遣われながら箸をまとめる。滝埜は眠そうな顔をして戻ってしまったが、星屋は残っていた。

台所というより厨房といった方が合っているそこへ物を運んで、洗い物をしていた星屋に近付いた。

「さっき隣に座ってた人もきっとそうだけど。星屋のこと、狙ってる男性結構いるよね」

栄生は内緒話の音量で話しかける。

きちんとあんなに大勢の位置も把握していた。



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