優しい爪先立ちのしかた
すぐに主人を疑うとは。
本当に小生意気な犬だ。
「ちょっと星屋のことからかってた」
肩を竦める。星屋はもう気にしていない様子でまた苦笑。
梢は皿を水に浸けながら「ちゃんと謝ってください」と言う。
「はーい、ごめんなさーい」
「いいえ、お気になさらず。こちらこそうっかり手を出してしまいそうでした、すみません」
「反省に温度差がありますけど」
「だって、あれ…なんだっけ?」
栄生は唇に指を当てる。
視線がそれに集まるが、言葉が出ない。
「まあいっか。ごめんね、からかって」
「いいえ」
にこにこと笑顔の二人を見て、梢は突っ込みたい気持ちを抑える。本家の人間は変だということがよく分かった。