優しい爪先立ちのしかた
ちょうど玄関の前の廊下を通って行くと、嶺が連れの女性と肩を並べているのが見えた。
「もう帰るの?」
「トラブったらしくてな。朝一じゃ間に合わねえから」
「気をつけて帰って下さいね」
栄生のその言葉は嶺ではなく連れの女性に向けられていた。
「大丈夫ですよー、警察には一回も捕まったことはありません!」
「…それは心強い」
嶺は梢を叩く。今日はよく叩かれる日だ、と思いながら嶺を見た。
「気を付けろよ」
「それはこっちの台詞ですけど」
「そーじゃなくて、栄生。あとお前。俺はあんまりこっちに寄り付かないから何もねえけど、変なことに巻き込まれんなよ」
「それは、」
言いかける。