優しい爪先立ちのしかた





学校に忘れ物をしたカナンが図書館に行っていた比須賀の後ろ姿を見つけた。

暑い昼間の気温は足を重くさせるけれど、カナンにそれは関係ない。

「ひさしぶり」

「ん、ひさしぶり」

色々吹っ切れた顔の比須賀にカナンは少し嬉しさを感じる。

足を引き摺る比須賀に歩調を合わせて進む。

「深山って予備校?」

「んー…ううん」

「頭良いんだ」

確かに、中学の時の記憶では出来ないわけではなかった。実際塾に行かずにあの高校へ合格した。

首を横に振るカナンの表情は暗くて、比須賀は目を少し泳がせる。そんなことに気付かず、二人の足は止まらない。


「深山さん、比須賀くん」


どこかで聞いたような声に比須賀の顔が上がった。



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