優しい爪先立ちのしかた
前ではなく後ろにあったその人物に目を見開く。
カナンも驚いていた。
「先生…!」
学校で見るようなジャージやスーツ姿ではなく、私服姿の式鯉が居た。
「こんにちは、二人でまたどっか行くの?」
「さっき会ったばっかりですよー」
「昼ご飯食べた?」
私服姿の式鯉はいつもより若く見えた。いや、若いのだが。
その質問に二人は首を振ると、ふわりと笑って「じゃあ行こう」と言った。
特に反対意見も上がらず、三人で商店街に入って行った。
深山コロッケを通り過ぎて少し行った場所にある薫る家。
定休日、と掛けられた看板を気にせずにガラリと引き戸を開ける。
「ちょっと先生、今日お休みですよ!」
深山コロッケの御近所さんだ。勿論カナンも来たことがあるし、休業日も知っている。