優しい爪先立ちのしかた
その様子を義巳も苦笑しながら見る。
「一応苗字一緒ですがね」
「え、知らなかったです! てゆーか、噂も聞いたことないです!」
「深山落ち着け。テーブルが外れる」
「だって、先生が!」
当人は面白そうにそれを見て、水をコップに注いだ。ノーコメントである。
落ち着いたカナンが考える。
「あれ? じゃあ義巳さん名前ですか?」
その質問に比須賀が首を傾げる。その先の疑問を掴んだ。
「ええ、名前です」
「薫る家って、義巳さんの名前じゃないんですね」
店名を口にした比須賀。それにむせたのは、義巳ではなく式鯉の方だった。
「もしかして…!」
カナンの期待のこもった声に、比須賀も苦笑した。
女の子はソウイウ話が好きなのである。
「はい、彼女の名前っすよ」