優しい爪先立ちのしかた

栄生が、家族の話をするのは初めてだった。

「私が小学生の時、本家を出る数日前。呉葉さんが死産した」

口調は滑らか。ついでに表情もあまり暗くないので、一瞬何を言っているのか梢には理解出来なかった。

…死産?

「弟だった。私が女だから、本家はその子に継がせるって話を耳にしたけど、私はそれを自然のことだと思っていたし、弟が出来るなんて嬉しかった」

「…兄は嫌でしたか」

「お兄さんはねえ、嫌じゃないけど一緒に住んでなかったから」

やっと口に出来た梢の冗談に指を唇に当てた。


「流産も嫌だけど、死産は怖いわね」


ぽつりと零した心からの声は、敢えて聞かなかったことにした。



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