優しい爪先立ちのしかた
まだ何かあるのかと、少し身構える。
「そんな理由で、私は氷室の底辺に居るのだけど。私のこと、嫌いになった?」
首を傾げて聞いた。
その瞳の奥がまた、揺れていた。
「なりませんよ」
「…なってよ」
「ずっと好きですから」
その好きに、深い意味なんてないことを知りながら、栄生ははにかむ。
「黙れチャラ犬」
「え、なんか言いましたかその口」
「何も言ってないけど。暑さが原因の幻聴?」
「今日の夕飯は豚カツにしますか」
栄生が梢を睨んで口論は終了。
実際、夕飯に出たのは串揚げだったが、栄生の分は全て野菜になっていた。