優しい爪先立ちのしかた

それ故に、と言ったら言い訳になるが。

それでも、それ故に、栄生はカナンが今何を思ってるのか理解し難かった。

ただひとつ、分かるのは、

「お願いー! 三年で留年なんて笑えないよー!」

…宿題のことで今は頭が一杯なんだろう。

「はいはい、どうぞ。なんか大荷物じゃない?」

「ありがとう! お泊まりセットも持ってきからね」

徹夜で写す気らしい。

「どうしてその情熱を勉強に向けられないのやら…」

栄生の呟いた声は、虚しくもカナンには届かず。梢が庭先で仕事をしているのを見て、「お邪魔します」と挨拶する声が聞こえた。

「勉強頑張ってくださいね」

「はーい」

高校生を少し懐かしく思う。



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