優しい爪先立ちのしかた
居間のテーブルでせっせと宿題を写すカナンに麦茶を梢が出したのは、それから少しした後だった。
「あ、ありがとうございます。雑草終わりましたか?」
「はい、一週間程放置していたら一面雑草が広がっていて驚きました」
「ここら辺良い土だから、すぐ伸びますよね秋になると学校の裏の椛が紅くなるんですよ」
にこにこと話ながらも手は休めない。
宿題写しのプロか。
梢は栄生の姿を少し探した。すぐにカナンはその意図が分かったようで、
「そっちの縁側で眠ってると思います」
指差す方へ顔を出すと、本当に眠っていた。
タオルケットを掛けてそっとしておこうと決める。
梢はカナンから貰ったコロッケを台所へ持って行ったあと、居間に戻った。