優しい爪先立ちのしかた

居間のテーブルでせっせと宿題を写すカナンに麦茶を梢が出したのは、それから少しした後だった。

「あ、ありがとうございます。雑草終わりましたか?」

「はい、一週間程放置していたら一面雑草が広がっていて驚きました」

「ここら辺良い土だから、すぐ伸びますよね秋になると学校の裏の椛が紅くなるんですよ」

にこにこと話ながらも手は休めない。

宿題写しのプロか。

梢は栄生の姿を少し探した。すぐにカナンはその意図が分かったようで、

「そっちの縁側で眠ってると思います」

指差す方へ顔を出すと、本当に眠っていた。

タオルケットを掛けてそっとしておこうと決める。

梢はカナンから貰ったコロッケを台所へ持って行ったあと、居間に戻った。


< 198 / 326 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop