優しい爪先立ちのしかた
ゆらり、視界の端に映る。
「…何を?」
「うおっ」
「うわあ!」
むくりと立ち上がった栄生がタオルケットを持ちながら目を細めていた。
叫んだ二人は、幽霊を見るかのような顔。
「私にまだ言ってないことって?」
梢に向けられた視線。カナンがあたふたしながら答える。
「先生のこと!」
先生? 眉を顰めながら首を傾げる。
梢とカナンの間に座った栄生。
「栄生ちゃん、薫る家の義巳さんって結婚してたんだよー」
「え? 先生はどこに関係してるの?」
「義巳さんの奥さんなんだって。式鯉先生」
目を丸くする栄生。
梢は式鯉の姿を見たことはないので、その姿を想像する。