優しい爪先立ちのしかた
恋心。
栄生が梢の方を向く。
「ね」
「………はい」
意味は分からなかったから、一応肯定の意を示しておく梢。
カナンはうまく誤魔化せた…とホッとしながら宿題を写すことに専念した。
一泊したカナンは「家帰ってぐっすり眠る…!」と栄生と梢に送られてよれよれと裏口から帰っていった。
「明日から学校ですけど、大丈夫ですかね」
「まあ、カナンだから。1日眠れば回復するでしょう」
未だ暑い気温。半袖から覗く腕は白くて頼りない。
信号で止まってパタパタと首もとを扇ごうとした梢の背中に声がかかる。
「壱ヶ谷!」
栄生も驚きながら振り向く。
そこには、栄生の記憶の中の女。
いつしか、繁華街で梢と抱き合っていた女がいた。