優しい爪先立ちのしかた
私の腕
「氷室さん、推薦は良いの?」
二学期が始まった。
栄生は式鯉の方を見て立ち止まる。同時に薫る家のことを思い出した。
いや、今は関係ない。
「あーいいです」
「来週までだから。ちゃんと考えた?」
眉を顰める式鯉。
栄生の思考はまる見え、らしい。
「親御さんとは相談したの?」
「もう少し考えてみます」
鞄を持って、教室を出た。
進路について考えていないわけじゃない。
でも、今はそれどころではない。
後ろからカナンが隣に並んできた。
「栄生ちゃん、反抗期?」
「ちょっとね」
「…の割に結構素直」
感心しながらカナンは言って、二人は歩き始めた。