優しい爪先立ちのしかた
帰ってから、家の電話の前で彷徨く栄生。
洗濯物を取り込んだ梢がそれを物珍しそうに見て「誰かに電話ですか?」と聞く。
「本家に。進路の話するの、忘れてた」
「俺がかけましょうか」
「ううん、自分で、」
そこでチャイムが響く。
梢が玄関に行って引き戸を開ける。そこに居た人物を見て、すぐに戸を閉めた。
結構大きい音が鳴って、栄生が玄関に顔を出した。
「どうしたの?」
「しつこいセールスです」
どんどん、と梢が背にしている戸が叩かれている。確かに、しつこい。
でも、
「ちょっと壱ヶ谷ー! 開けてよ!」
…セールスじゃないと明らかに分かる。