優しい爪先立ちのしかた



帰ってから、家の電話の前で彷徨く栄生。

洗濯物を取り込んだ梢がそれを物珍しそうに見て「誰かに電話ですか?」と聞く。

「本家に。進路の話するの、忘れてた」

「俺がかけましょうか」

「ううん、自分で、」

そこでチャイムが響く。

梢が玄関に行って引き戸を開ける。そこに居た人物を見て、すぐに戸を閉めた。

結構大きい音が鳴って、栄生が玄関に顔を出した。

「どうしたの?」

「しつこいセールスです」

どんどん、と梢が背にしている戸が叩かれている。確かに、しつこい。

でも、

「ちょっと壱ヶ谷ー! 開けてよ!」

…セールスじゃないと明らかに分かる。



< 204 / 326 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop