優しい爪先立ちのしかた

栄生は疑わしげな眼で梢を見る。

それに耐えられなくなった梢は、叩かれる戸に一度「煩い」と一言。
開けて、ピシャリと閉められた。

……で、結局誰なんだろうか彼女は。

唇に指を当てて考える栄生。

この前、カナンを送った帰りに会った彼女は確かに梢の知人だった。

あの後栄生が訊いても「ただの顔見知りです」としか答えなかった。

戸の向こうから話し声は聞こえない。

躊躇わず、栄生は戸を開いた。


「あー！　ハナちゃん？　ハナちゃんもほら！　行こう！」


開いた瞬間、腕を引っ張る彼女。梢はそれを見て顔を顰める。

だから一体あなたは誰なんだ…！