優しい爪先立ちのしかた

時折、大人は子供より我が儘である。

それは栄生は短い人生の中、それを知っていた。

しかし、その我が儘を梢が使うとは思わなかった。

若いから? 年上に感じなかったから? それとも梢は大人とは違うとどこかで思っていたからだろうか。

「我が儘ではないと思うけど、」

梢も梢で、何故未だ子供の栄生に何を求めているのか。

「お母さんが会いたいと思っていたら、それは我が儘になるのかもしれない」

そこまで言って、気づく。

そういうことか。

「私も挨拶したいし、今年はちゃんと行こうよ。梢が行かなくても一人で行くから」

背中をバシッと叩く手。

痛いだけじゃ駄目。音が大きいだけでも駄目。

その人がちゃんと前に足を出さないといけない。



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