優しい爪先立ちのしかた

栄生もそうして教わり、そうして歩いてきた。

そういう経験値からいうと栄生の方が梢より上である。

促されるようにして頷いた梢はそろりと栄生を盗み見る。

いつか見たような自信に満ちた笑顔に、自分も安心させられることに気付く。それから目を伏せた。

彼女の為なら死んでも良い。

初めて、そんな風に忠誠を誓った。







ところで、と栄生が前置きをして話しかける。カナンは少し構えた。

「比須賀とヤったの?」

吹いた。

栄生の家のテーブルの上のこと。




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