優しい爪先立ちのしかた

ティッシュで拭かれたテーブルの上へ再び戻ってきた飲み物。半分程なくなったカナンのコップと並ぶ。

「何もしてません。愛のって、何日もお風呂に入ってなかったんだよ? そんな人と寝たいってまず思わないでしょ」

「汗は興奮剤って」

「栄生ちゃんまだ夕方だから!」

ビシッと縁側の夕暮れ色に染まった空を指す。

確かに夕方。

栄生は後ろ手をついて天井を仰いだ。

「えー、梢が居ないから話せるのに」

「じゃあ栄生ちゃんどうなの、梢さんと」

必殺質問返し。

そう来るとは思っていなかった栄生が罰の悪い顔をする。

「何も。前提として私と梢、付き合ってないし」

「あたしだって比須賀と付き合ってないよ!」

「え、そうなの?」

意外な答えに素っ頓狂な声が出た。



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