優しい爪先立ちのしかた

てっきり、と思っていた栄生は目をパチクリ。

それから小さく、

「つまんない…」

「何か言いましたか栄生ちゃん!」

「ただいま帰りました」

襖が開いた。現れた梢が見たのは、クッションを栄生に振り上げているカナンの姿。

少しの沈黙の後。

「カナンさん、今日の夕飯どうしますか?」

「食べていきます!」

「はい、少ししたら呼びますね」

そして何事もなかったかのように襖を閉めた。カナンはそれを見て、クッションを下げる。

栄生は静かにお茶を口に含んだ。

「…いつから梢あそこに居たんだろう」

「栄生ちゃん…ごめんね…」

「ううん…いいの…」

残されたその二人はしんみりしていた。



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