優しい爪先立ちのしかた

今、嶺は説明する気がないことがすぐに分かったので、栄生はカーディガンを羽織って家の鍵を持った。

いつも梢が運転している車を他の男が運転しているのには違和感があるが、元は嶺から貰った車だったのだと考える。

「梢、何かに巻き込まれたんですか?」

「逆、だな」

信号で止まり、栄生を盗み見るが、窓の外を見ているだけだった。前に向き直して、煙草を取り出したがすぐにポケットにしまう。

「不良の血でも騒いだのかしら」

「正当な理由はあったらしいけど、相手に怪我させて警察呼ばれたんじゃないか? あいつ、結構喧嘩っ早いからな」

「お兄さんはいつから梢と知り合ったんですか?」

眉を寄せた嶺。
栄生は首を傾げた。何か?



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