優しい爪先立ちのしかた

半分血が繋がっている二人。

どちらも母親似だが、その思考は似ていた。


「最初に梢に会ったのはお前だろ?」

「……え? お兄さんが梢を連れて来たんじゃないですか」

「栄生が俺に梢を引き取ってくれって言ってきたんだろ、って。覚えてないのか?」


いつの間にやら駐車場に停まった車。
栄生は返事をせずに車を降りた。

全く覚えていなかったからだ。

しかも前に『梢とはすれ違ってもいなかっただろう』のような発言をした。してしまった。

嶺の話が本当であれば、すれ違う所の話ではない。それを梢は知っていて、栄生の処へ来たのだろうか。

答えは出ない。
なんたって、当人は警察の御厄介になっているのだから。



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