優しい爪先立ちのしかた
栄生と仲良く後部座席に着いて、日付の変わった国道を走る。
本来なら眠っている時間であるが、栄生は完全に目が冴えていた。
「あの女の子、乗せて行ってあげればよかったかな」
「親御さんが来るらしいです。何でも家出中とか」
「家出ねえ」
窓の外に向いていた視線が梢に帰る。そういえば、と続けて口を開いた。
「本家にどうして呼び出されたの?」
何となく予想していたのは栄生の進路のこと。それか梢のこれからのことか、正月のこととか。
少し顔が強張ったのを栄生は見逃さなかった。
良くないこと、か。
「なんか言われて、苛々して人殴っちゃ駄目でしょう?」
女子高生に諭される日が来るとは。