優しい爪先立ちのしかた
全く、と肩を竦めて栄生はそこで話を終えようとする。
暗めの話は笑ってする。
そう決めている栄生がこの空気のまま梢に話を聞くことはない。
「苛々するくらい、何言われたんだよ?」
それを知ってか知らずか、嶺が口を挟む。
「いや、でも…」
「俺が居ると言い難い話題なら、俺はもう知ってる」
栄生がミラー越しに嶺を見た。
仕事で忙しい嶺がわざわざ梢が帰るまで栄生と一緒に居てくれた理由。
そういうことか。
「だから、俺のこと気にしてるなら空気と思ってくれてどーぞ」
「…いつも空気扱いですよ」
「栄生、梢は反抗期か」
「みたいですね」
はあ、と溜息を吐いて黙る嶺。梢は心を決め口を開いた。