優しい爪先立ちのしかた






「おっはよー! え、どしたの?」


朝からて元気なカナンの挨拶が頭に響いた栄生は、どんよりとした顔をそちらに向ける。

「徹夜…初めて徹夜を体験した」

「え、なに? 初体験?」

「前々から思ってたんだけど、カナンの頭って中学生男子とそう変わらないよね」

「栄生ちゃんに言われたくないんだけど!?」

まだ来ていない前の席に座って、頬を膨らませる。コロッケでも入ってるのかしらん、と栄生はそれを人差し指で潰した。

空気の抜ける音。それから、カナンが思い出したように「あ!」と言う。

「梢さん、腕時計喜んでた?」

「あ、忘れてた。てゆーか、その梢の所為なんだよね、徹夜」

「ついに梢さんと結ばれ、」

「違う」



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