優しい爪先立ちのしかた
即座に否定する。分かっていながらカナンも聞いているのだ。
周りが一生懸命勉強している中、二人は小声で昨日あったことを話し合った。
「流石梢さん」
「おかげで眠らず学校に来ないといけなくなったんだから」
「推薦組も大変だね」
「深山」
教室の入り口から男子の声が聞こえる。一瞬教室がざわめき、栄生が呆れたように笑った。
「英和辞書貸して」
「いいよー、ロッカーにある」
多分殆どの生徒はカナンと比須賀が"愛の逃避行"をしたのを知っている。学校で何か問題になったわけではないが、それは親にも知られているのだろう。
カナンが立ってしまって、栄生は昨日のことを思い出した。
自分に弟が出来るのか。