優しい爪先立ちのしかた
一度目ほど、嬉しくは感じられなかった。
それは伝え方が問題なのか、捉え方が問題なのか。
それとも死んでしまった弟に対する罪悪感か。
栄生は家を継ぐ気は元々ない。
それでも、もしも栄生が外で、嶺が内だったのならと考えることがある。
考えるだけ無駄だとも思う。そしてそれを誰かに口にしたことは無い。
嶺を傷つけることが分かるから。
何にしろ、本当のところ嶺が義理の弟の存在をどう思ったのかは謎だ。
「あ、私は外か」
そういえば、と口から出た。
だから、あまり関係ない。
これから産まれる弟に、「お姉ちゃん」と呼ばれる日は来ないのだから。
「ただいまー」
「おかえり。比須賀は一般?」
「みたい。夏は図書館でずっと勉強してたって」