優しい爪先立ちのしかた

ふうん、頭良さそうだよね。

栄生がそう言うのを聞いて、そういえば比須賀の脚のことを知らないのを思い出した。

「栄生ちゃんも頭良いじゃん。使わないなら一回だけで良いから貸してよう」

「貸してあげたいのは山々ですがカナンさん、もう少し努力なさったらどうですか」

「あたしの頭の悪さは殆ど血みたいなもんだもん」

「血、ねえ…」

瞳の奥が仄暗くなった栄生。丁度前の席の女子が登校してきて、カナンが退いた。

かける言葉を探して、諦めた。

栄生は友人としてカナンと接してくれていた。課題を見せてくれたりコロッケを食べたり泊まったり交友関係に口を出したり。

でも、どこか一線を引かれている。

「だったら私の頭の良さも説明がつくかも」

時折そんな面白くもないジョークを言ってきたりするし。



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