優しい爪先立ちのしかた
生真面目な栄生の様子に、式鯉は目をパチクリとする。
一度立ち上がってカーテンを開ける。雨はすっかり止んでいて、雲の切れ間から光が差し込んでいた。
ついでに空気も入れ換えてしまおうと、窓を開ける。
「深山さんの選択を逃げだって言うのは、友達として最低かもしれないけれど。深山さんの人生は深山さんが決めることだから」
窓枠に腕をかけた式鯉が座っている栄生に振り向く。
「だから、氷室さんが自分の進路を逃げだって思わないならその道をちゃんと進みなさい。あなた達はまだ若いんだから、大人になって『これは逃げじゃなかった』って言えるようになりなさい」
笑顔が幼くて、栄生はそこに自分を見た気がした。
大人のカタチで、朗らかに笑うひと。