優しい爪先立ちのしかた
ぼくの小指
揺すれば雪が降りそうな空。
灰色の曇の向こうに本当に青空があるのか定かじゃない。
十六夜の人間がバタバタと動いている中、栄生と梢は聖と一緒に奥の部屋に居た。
「曾お祖父様、本家で亡くなったの?」
黒い着物を着て窮屈そうに座る聖に話しかける。聖の住んでいた家は分家、京都にあるここが十六夜の本家である。
聖の両親などがこちらに住んでいるらしい。
「そう。それから色々面倒なことが起きて、今に至る」
「寿命?」
「多分。まあ寿命だろうとなかろうと、長生きしすぎなんだよ。お陰で後が詰まりまくってる」
後、というのは後継者のこと。
梢は静かにお茶を啜った。
襖の向こうは忙しくしているが、慣れない場所で手伝えることは少ない。現に聖もそういう理由でここに居座っている。