優しい爪先立ちのしかた
聖は栄生の氷室での状態を知っているが、気遣ったことはなかった。
そういうものとは無縁の人間。
「聖のお母さん大変でしょう」
「自分の親世代と争うのはな」
「でも長生きしそう」
「最近の爺婆は長生きで困んだよ」
溜息を吐く聖を笑いそうになるのを堪えた。栄生はお茶請けをくるくると手の中で回す。
これどこから切るのだろう。
思っていた傍から梢に取られて、開けられて戻ってくる。「ありがとう」と返して口に運んだ。
「そういえば、呉葉さん来た?」
「さあ」
「今日来るかな、顔合わせるの面倒くさい」
テーブルに肘をついた聖が肩を竦める。仕方ない、という様に。
「その人のお陰でお前が今ここに居られるんだから、諦めとけ」