優しい爪先立ちのしかた

梢にも降る雪。

栄生はそれを見上げて、髪色が暗くなっているのに気付く。染めたのではなく、落ちてきている。

見られていることに気付いて、梢も栄生を見た。

「どうしました?」

「私が付き合おうって言ったら、梢は付き合ってくれる?」

はらはらと落ちてくる雪の欠片を払う。梢はその手を止めた。

その想いは知っていた。
そして、自分の想いがバレているのも知っていた。

だからといって、ずっと保っていた一線を越えて良いのか。

同じ家に住む、大人びていてたまに幼くてまだ高校生の栄生の運命を左右する人間になれるのか。

答えは、否。

自分で底辺を名乗っているも、栄生は氷室本家の長女。本来、梢とは縁もない。


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