優しい爪先立ちのしかた

「最近、出会った時の栄生さんが懐かしくなります」

「梢はお嬢様なら私じゃなくても良いんだ」

「今の栄生さんの方が好きですよ」

「テンプレートな答えは受け付けませーん」

「添い寝もセックスもです」

脱線する話を戻される。

「どっちもしてない。カナンと喧嘩したときは、売り言葉に買い言葉って感じで言っちゃっただけ。尾形には、ちゃんと彼女いたし、今は家族だって」

浅く腰掛けて背もたれに背を預けた栄生。

それを聞いて、梢は返す言葉を失っていた。

寝た寝ないの話が解決した今、もうひとつの話題が気になってくる。

「じゃあカナンから聞いた? 尾形が死にそうだった話」

「血溜まりの…ですか」

車をコンビニに停めた。



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