優しい爪先立ちのしかた
半分にされた大根を口に運ぶ。
「熱くないですか?」
「あふい」
「火傷しますよ」
お茶を出される。なんて出来た犬なのだろう、と栄生はそれを受け取った。
「心配させたくなかったみたいで、尾形もそれを言うつもりはなかった。まあ赤ん坊なら兎も角、女子高校生は完全にアウトよね」
「……ですね」
今の自分にそれを言うか。
「あの日、元々尾形は本家に行く予定があった。車が車検で出てたからバスで本家に向かうつもりだったんだけど、バス停に何故か恋人が居た」
ちくわの半分を梢の口に持っていく。無言でそれをもらって、咀嚼した。
「恋人は、もう正気の沙汰じゃなくて、私を刺す為に持ってたナイフは私を庇った尾形に刺さった」
史上最高に、重たい話。